自民党政務調査会の部会で積極的に発言し、政府の政策を厳しく糺すと、1時間後には議員会館の私の部屋に、担当省庁から面会(アポ)の依頼が来る。面会時間を設定すると課長クラスの役人がやって来る。
そして、部会で提示した資料の追加分を持ってきて、政府の立場を説明する。私が事実誤認などをしていれば、それもヤンワリと指摘する。また、私の資料要求などに応えられないときには、その法的根拠を説明する。私に議論で負けると、私の意見を法案に反映させる道を模索する。
部会は「大衆討議」の場であり、表面的な議論しかできないが、静かな環境で話をすると突っ込んだ意見の交換ができる。このような作業を通じて政策が形成され、政治家と官僚との関係が緊密になっていく。
政治家にとっては、霞ヶ関に人脈を広げることになる。役人にとっては、優秀な政治家に目をつけ、側面から支援することによって、将来の自分たちの省の大臣候補として育てていく。
このようなプロセスを何度も繰り返して、政策の原案、そして法案ができていく。このように法律案は、事前に与党審査を通らなければならない。その第一歩が部会である。その後、政策審議会にかけられる。これは、形式的なもので、ほとんど議論もなく了承される。
私は、参議院自民党の政策審議会長だったので、この一連の作業に関わってきた。
与党審査の第二段階が総務会である。総務会は、原則全会一致で、この場で異論が出ると、法案の了承が遅れることになる。小選挙区制の導入によって、党執行部(首相官邸)に権力が集中し、「政高党低」という状態になっている。
小泉純一郎首相は、郵政民営化法案を強引に通すために、総務会を骨抜きにし、全会一致方式ではなく多数決という手を使った。当時は、小泉首相は絶大な国民的人気に支えられており、多くの自民党議員が本音では郵政民営化に反対であったが、自分の選挙のことを考えると、反対論を公言することは躊躇せざるをえなかったのである。
私は、当時は自民党憲法改正草案起草の責任者であったが、郵政民営化の嵐の中で、憲法改正すら政治のダイナミズムに晒されることを痛感したものである(拙著『憲法改正のオモテとウラ:憲法改正とは政治そのものである』参照)。
今国会の最大の目玉である働き方改革法案が、4月3日の総務会で了承されず持ち越されることになった。久しぶりに総務会が復権したようである。
これは、森友問題で内閣支持率が下がり、官邸の求心力が低下していることが原因である。一方的な「政高党低」は終わり、「党高政低」の傾向が強まるかもしれない。
法案は自民党で了承された後、自民公明の与党政策責任者会議で最終了承を得る。