おはようございます。
様々なランキングで、上位入賞しているマルチタレントのトリです(2023年度「使えない男ランキング」1位、「ベストシエスタ―」3位、「ぐうたら選手権」2位・・・等)。
中学生の頃、遠藤周作(狐狸庵山人)の『ぐうたら生活入門』という本を読み、そこで描かれる生活様式に憧れたものだ。
夏目漱石などの主人公によくある「高等遊民」とは違い、遠藤さんの「ぐうたら」は、本当にただのぐうたらで、これなら自分でもできると思い、嬉しくなった。
のが運の尽きだった。
つまり、それを忠実に実践したところ、このざまである。
世の中には様々な悩み等に対するアドバイスとして「痩せる体操法」とか「実績を上げる時間術」とか「出来る人はなぜ方眼ノートを使うのか」とか、いろいろあるが、これらを忠実に実践する人は少ない。
だから、巷には百貫でぶや貧乏人や、使えない社員が溢れているのだ。
じゃあ、お前が「お金持ちが実践している生活習慣99」等ををやってみろと言われそうだが、そうはいかない。
もう、私は「ぐうたら生活マスター」になってしまっているのだから、今さら他流派に鞍替えは出来ないんである。
などと威張っている場合ではない。
ぐうたらであり続けるためには、他の成功術などやっている暇がないほど忙しいのだ。
ぐうたら生活は、自堕落な生活とは違うのである。
遠藤周作が良い例だ。
狐狸庵師の本が手元にないため、正確な引用を出来ないのが残念だが、師は近所を散歩したり、原稿用紙に抜いた鼻毛を並べたり、安いお酒をちびりちびり飲んだり、すき間なく「何か」をしている。
何もせずにブラブラしているように見えたとしても、「ブラブラ」はしている。
「ブラブラ」するくらいなら仕事しろ、と言われそうだが、それは大いなる誤解である。
誰が座禅している僧侶に向かって「座ってばかりいないで、仕事しろ」とか言うだろうか。
Eスポーツの選手に向かって「ゲームばかりしていないで、運動しろ」とか言うだろうか。
しかし、狐狸庵師先生の時代はパソコンもスマホもなく、SNSなども存在しなかった。
心は、現代人よりも平静で澄み切っていたことだろう。
世の中はさらに進んで、今やAIが仕事を奪うとまで言われている。
さも困るかのように言われているが、代わりにやってくれるならそれでいいじゃないかとも思う。
そのせいで、自分の収入がなくなり、生きていけなくなるとしても、それはそれで仕方がない。
そのうち、AIが代わりに生きてくれるようになるんだろう。
そうなったら、お前なんか要らなくなるぞ、と言われるかもしれない。
しかし、AIだけが生きていて、人間がいない世の中になって、何が楽しいのか。
そういう世の中とは、早々におさらばした方がよろしい。
これは、トリだけが言っているのではない。
かの、天才哲学者マルクス・ガブリエル君もそう言うておる。
ガブ氏は、AIの進歩とSNSの全盛を見て、「暗黒時代」であると評している。
「生きているのが見かけだけで先に進むことだけが大事なこの暗黒時代は、次のように特徴づけられる。道徳的認識という光がシステム上まばらに降り注ぐだけで、例えばフェイクニュース、印象操作、プロパガンダ、イデオロギーその他の世界観により目が覆われているという暗黒時代である。」(菅原潤『マルクス・ガブリエルの哲学』人文書院、2023年、142頁)
ちょっと何言ってるか分からないが、ガブちゃんも、今のままだとお先真っ暗だと思っているらしいことだけは分かる。
大事なのは道徳的認識であり、そのためには啓蒙が欠かせない、というのが彼の見解らしい。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
そういうのも、はっきり言ってめんどくさい。
と、そのように感じて昼寝に取りかかるのが、ぐうたら人間のありかたである。
※原稿用紙を広げて、何もしない。