公然と国民に嘘を言う日本の農政

 

現状は、米農家への補助金が約4000億円、減反政策による高米価により
 約6000億円、併せて約1兆円の負担を国民は強いられている。(山下一仁氏)

 

私は、キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)研究主幹山下一仁氏の下記の著書や講演などによって、農政の歴史と現実を知りました。私が読み、聞きした範囲は知れていますが、大きな歴史と問題点は理解できたと思います。主なものを拾ってみます。

最下段に、キヤノングローバル戦略研究所の山下氏のホームページのURLを添付しました。

 

小農主義

明治政府から約150年間、一貫して変わっていない農政の根本は小農主義です。

農家は小さい方が良い、という考え方です。山下氏の著書・論文から解りました。

日本の終戦1945年までは地主たちの都合により、戦後、昭和時代はGHQと自民党とJAの為、平成以降はもっぱらJAの為に小農主義が続けられました。昭和時代に、田んぼの形は四角な水田に変わりましたが、中身は変わっていないのです。これでは悪くなる一方なのは当然です。下に添付しました『いま蘇る柳田國男の農政改革』や

 「農協との決別なしに農業は復興しない」をお読みいただくと解ります。

 

まず、下記2つをお読み下さい。

【平成農政を振り返る】減反廃止はフェイクニュース、令和で真の改革を
 山下一仁著、時事通信社『Agrio』 2019年7月2日号に掲載

 

「農家はもっと減っていい:農業の『常識』はウソだらけ」(久松達央光文社新書)

アマゾンのホームページですが、下の方に本の内容が説明されています。

久松氏は、1970年茨城県生まれ。1994年慶応義塾大学経済学部卒業後,帝人㈱を経て,1998年に農業に転身。年間100種類以上の野菜を自社で有機栽培し,卸売業者や小売店を経由せずに個人消費者や飲食店に直接販売するDtoC型農業を実践している。

「農業の常識はウソだらけ」は本当です。

 

農政トライアングル とは

JA、族議員、農水省の三者を指します。山下氏が作った言葉ですが、言い当ててます。

 

皆さん、次のように思っていませんか?
ウクライナ戦争後は世界の食料事情が激変していますが、それまでは、

下の箇条書きの内容は全部ウソです。これがプロパガンダです。

ここで、説明しきれませんので、改めて書きます。

■ 世界は食料が足りない、食糧危機が来る。
■ 日本の農業への補助金は少なすぎる。先進国はもっと出してる。
■ 農業従事者が足りない。
■ 世界では農地が足りない。
■ 日本の米作り、野菜づくりの技術は世界のトップレベルだ。

 

山下一仁しの略歴

東京大学法学部卒業、ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士、東京大学農学博士。1977年農林省(現農林水産省)に入り、交渉調整官、ガット室長、地域振興課長、食糧庁総務課長、国際部参事官、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを経て2008年退職。

 

山下一仁氏の主張の要点だけ記します。

・小農主義が農業衰退の根本原因である。

   (兼業農家にまで補助金を出しているのは日本だけ)

・現状は、米農家への補助金が約4000億円、減反政策による高米価により

 約6000億円、併せて約1兆円の負担を国民は強いられている。

・米を自由化し、零細・兼業農家に退場してもらい、主業農家に集約し、

 主業農家に戸別所得補償を行えば、現状より遥かに少ない補償金(補助金)で、

 国民により安価な米を供給できる。

・減反を止め、主業農家に集約すれば、増収・増産できる。

・コストが下がるので、余剰米は輸出で稼げば良い。充分可能である。

 食料危機の時は輸出米が備蓄米の役割を果たす。

 

編者註:松尾雅彦氏のスマート・テロワールの考え方と違いは、山下氏は

 水田には米を作ることを主張しているが、松尾氏は余剰農地は畑地化して、

 現在ほぼ90%も輸入しているトウモロコシ、麦、大豆を作ろう、と主張

 しています。現実的には、日本の水田の約40%を占める中山間地の水田は、

 単位面積が小さくてコストの低減が難しいと思えるので、米作は平野部の

 米処に集約し、中山間地は畑地化してトウモロコシ、麦、大豆などを

 生産したほうが、食料安全保障上から考えても良いのではないかと

 考えています。これは予想であり、実証的な研究が必要と考えます。)

 

山下一仁氏著書

・『国民のための「食と農」の授業 』日本経済新聞出版本部, 2022年

  (東京大学大学院の授業で教科書として使われています。)

・『いま蘇る柳田國男の農政改革』新潮選書, 2018年

  (江戸時代から現在に至る農政の歴史が判ります)

・『TPPが日本農業を強くする』, 2016年

  (TPP反対論のプロパガンダが判ります)

・『バターが買えない不都合な真実』, 2016年

・『日本農業は世界に勝てる』, 2015年

・『日本の農業を破壊したのは誰か ~『農業立国』に舵を切れ~』講談社, 2013年
  (農政トライアングル(JA、族議員、農水省)に実態が判ります)

・農協の陰謀-「TPP反対」に隠された巨大組織の思惑』宝島社新書, 2011年

・『農協の大罪-「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安』宝島社新書, 2009

・『食の安全と貿易-WTO・SPS協定の法と経済分析』日本評論社, 2008年

 

新聞・商業誌等掲載論文

・『世界に通用する農業へ―高品質生かし輸出に活路』日本経済新聞・経済教室,   2011年6月10日

・『農家の戸別所得補償―『零細』保護でコスト上昇』日本経済新聞・経済教室,   2010年5月13日

「農協との決別なしに農業は復興しない」月刊「WEDGE」, 2008年9月

・「『減反ストップ』のラストチャンスは今だ」Foresight, 2008年7月号

・「『消費者のための農政』を取り戻せ」Foresight, 2008年7月号

・「WTO交渉がこのまま妥結すれば日本の食糧自給率はさらに下がる」

  週刊ダイヤモンド2008年7月12日特大号

・食料・農業・農村基本法見直しのウソとまやかし~だまされないために

  知っておきたい本当のこと。論座に掲載(2022年11月2日付)

 

 

疑問

ご紹介した論文や記事を読めば、高校生でも理解できる内容です。もちろん、東大はじめとした日本のエリートの皆さんや国会議員の皆さんが解らない筈がありません。実は、小農主義ではダメという主張は明治の最初からありました。代表格が柳田國男です。にも関わらず、150年間変えられなかったのです。政治って、つくづく難しいものだなと思います。

どうしたら変えられるのでしょうか?是非、お知恵をお貸し下さい。

 

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