去る6月9日に、阿部知事同席の佐久地域振興局で行われた

「佐久地域戦略会議」において、藤巻進軽井沢町長が、

「上田地域も含めて一つのスマート・テロワールを創りませんか」

と提案がありました。

議事録から本人のご了解を頂いて転載致します。

 

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藤巻進軽井沢町長の提言「スマート・テロワール」

佐久地域戦略会議(2022年6月9日)にて

 

 軽井沢町です。私からは、佐久地域に広げたいと考えている取り組みを提案致します。

 資料は後に、「スマート・テロワールのすすめ」というのを添付しました。スマート・テロワールというのは、カルビーの社長をやられた松尾雅彦さんの推奨している考え方であります。私もこの本を読んで目から鱗でありました。まさにこの地域にふさわしいものだなと心より強く思っております。地域活性化、それから農業振興、食糧の自給率の向上、そして過疎化対策の一つの方策になるのではと思っております。

 

 まさにこのスマート・テロワールというのは佐久地域11市町村の共通項として証明できるのではないかと思っております。更に、佐久地域の持っているポテンシャルを顕在化していく役割を果たすのではないかなとも思っております。11市町村それぞれ、産業構造が違いますので、連携すれば、それぞれの役割が見えてくるような感じがします。

 

 畜産、それから穀物・野菜等の生産、そして加工・流通・サービスとつながり、それが自給圏となりますので、そこに消費者もいる訳です。また、プラス外来の観光の皆さん方も来る地域ですので、それも併せて地域内循環をするという考え方で地域を作っていくことができるのではないでしょうか。自給力を上げると食物生性が増え経済活動が活発になり、地域で使うお金をできるだけ外に出さないようにすれば、よりたくさんのお金が地域内に残ることになります。

 

 食肉センターを廃止したわけでございますが、このスマート・テロワールの考え方から食肉センターを見た時に、また見えてくる風景も違ってくるかなと思っております。どうしても自分の 町、地域だけを考えがちですけれども、やはり地域が一体となって連係していくということが、これから人口がどんどん減っていく中では大切なのだと思います。それぞれが感じあえる地域が作れるのではないでしょうか。

 

 それから、地域自給圏を作る場合は、佐久地域の11市町村だけでは小さいのかなと、私とすれば上田地域も含めて一つのスマート・テレワール地域自給圏を作ればかなり良いものができていくのではないかと思います。

 

 スマート・テロワールについては、数年前に皆様方お集りの時に、中島元副知事もおいでいただいてお話をお間きしましたけれど、この地域を活性化していく策としては非常に有効なのかなと思っております。以上です。

 

 

(安江註)長野県農政部では2017年より、「スマート・テロワール ・農村消滅論からの大転換 」の著者松尾雅彦氏の指導により、5カ年計画で「地域食料自給圏実証実験」を行いました。

 

 

 

添付文書:『スマート・テロワール』のすすめ

 

松尾雅彦著

(AFCフォーラム2015 リポートより)

 

 

 英国人女性イザベラ・バードは、明治11年に外国人がまただ足を 踏み入れたことのない東北地方を馬で縦断し、その時訪れた山形県米沢地方について次のように記録しています。

 

 「米沢平野はまったくのエデンの園だ。鋤のかわりに鉛筆でかきならされたようで、米、綿、トウモロコシ、煙草、麻、藍、豆類、茄子、くるみ、瓜、胡瓜、柿、杏、柘榴(ザクロ)が豊富に栽培されている。繁栄し、自信に満ち、田畑のすべてがそれを耕作する人々に属する稔り多きほほえみの地、アジアのアルカディアなのだ」。(イザべラ・バード『日本奥地紀行』)

 

  現在の日本の農村からはイザベラ・バードの見た五穀豊穣の美しい農村の面影は、ほとんど喪われています。戦後70年、全国の農家はこぞって米作りに集中し、しかも消 費者の米離れで水田は過剰になり、全国に休耕田や耕作放棄地ができました。まさに「田園まさに蕪(アレ)なんとす」(陶淵明『帰去来辞』)です。

 

   私は『スマート・テロワール』(美しき豊穣の村)を著し、荒廃した農村に昔は当たり前であった彩りあふれる風景の回復を提唱しています。

 スマート・テロワールへの道筋は休耕田を畑に変えて、小麦、大 豆、トウモロコシ、ブドウ、ジャガイモなどの畑作物栽培に転換し、同時に牛や豚を放牧飼育することを端緒とします。

 

 ついで、畑作と畜産を原料とする、みそ、しょうゆ、パン、麺、ハム、ソーセージ、 チーズ、ワインなどの加工場や醸造所を呼び込みます。

 

 さらに、それらの食品の地域内流通業を復興し、近隣の地方都市を含めた人 口10万〜70万人の自給圏たるスマート・テロワールを形成していくのが、私の構想です。

 

 スマート・テロワールが全国に100カ所ほども構築できれば、食料自給率の大幅改善と、GDPの2〜3%ほどの押し上げが可能になるでしょう。そして、何よりもイザベラ・バードの見た逝きし日の農村の面影が現実のものとしてよみがえることが期待できると考えております。

 

 

松尾雅彦(1941年~2018年)

NPO法人「日本で最も美しい村」連合副会長。

まつお まさひこ 1941年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。67年カルビー 株式会社入社。92年同社社長、2006年同社相談役に就任。08年第41回食品産業功労賞受賞。新品種産業化研究会(JATAFF内)会長、スマート・テロワール協会会長。著書に『スマート・テロワール 農村消滅論からの大転換』(学芸出版社)。

 

イザベラ・ルーシー・バード(Isabella Lucy Bird, 1831年(天保2年)10月15日 - 1904年(明治37年))は、19世紀の大英帝国の旅行家、探検家、紀行作家、写真家、ナチュラリスト。バードは女性として最初に英国地理学会特別会員に選出された。1878年(明治11年)6月から9月にかけて、通訳兼従者として雇った伊藤鶴吉を供とし、東京を起点に日光から新潟県へ抜け、日本海側から北海道に至る北日本を旅した。これらの体験を、1880年(明治13年)、"Unbeaten Tracks in Japan" 「日本の未踏の地へ」2巻にまとめた。第1巻は北日本旅行記、第2巻は関西方面の記録である

 

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