弟橘比売命

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弟橘比売命ーおとたちばなひめのみことー
　『日本書紀』では、弟橘媛と表記。
　　相模国の国造穂積の武忍山垂根ーたけおしやまたりねー

　『日本書紀』では、忍山宿禰ーおしやますくねーと表記。の娘。
　　妹の弟財郎女ーおとたからのいらつめーは、
　　成務天皇の后になっている。

倭建命の妃。

御子　若建王ーわかたけのみこー
　　　　『日本書紀』では、稚武王ーわかたけるのみこー
　　　　　別名　稚武彦王ーわかたけひこのみこーと表記で、

　　　　　両道入姫皇女の御子になっている。

弟橘比売命は、倭建命の東征に付き従っています。
大和から伊勢に向かい、その後訪れた尾張国で、美夜受比売
『日本書紀』では宮簀媛と表記。と出会い婚約している事と、
その後訪れた相模国の国造の娘である事を考えると、
大和を出発した時から一緒であったとするよりは、
相模国を訪れた際に出会い、
その場で結婚したのではないかと思われます。

相模国で、倭建命を陥れた相模国造が、
弟橘比売命の父親であるとは書かれていませんが、
一つの国に、何人もの国造がいるとは思えないので、
同族ではあるでしょう。

その一族の比売が、
倭建命が火攻めに遭った際同行していて、
一族を殺され、帰る家もなく、
そのまま倭建命一行と共に、東征に向かったのではないかと推測します。

でも、火攻めで命の危機に瀕した際、
とっさに、比売を気遣い庇う倭建命に、
とても感動して嬉しかったと、辞世の歌を詠んでいたり、
四面楚歌の危険な旅にも関わらず、
一族の仇と思われる倭建命と共に行動し、
命を懸けて救っている事から、
二人は、深く愛し合っていたのでしょう。

相模国から、上総国へ渡る際、
走水ーはしりみずー（現在の横須賀市）の海を見て、

倭建命は、
「こんな狭い海なら、難なく渡れるだろう」
という言葉を発してしまいます。
この言葉は、その海を治める海神を怒らせてしまいました。

舟に乗り、海に漕ぎ出した途端、
波立ち荒れ狂う海に、舟はくるくると回り翻弄されるばかりで、
少しも進もうとしてくれません。

訳が分からなく狼狽える一行の中で、
唯一、海神の怒りに気付いたのが、弟橘比売命でした。
何とか、愛する夫を助け救いたい。
自分に出来る事を懸命に考えた比売は、
ある決断をします。

舟の帆先に立つと、
「わが身を捧げます。
どうか、怒りをお治め下さい」

海神に向かい発した比売の言霊に驚く倭建命に、

「私が、皇子の身代わりとなって海峡に沈み、
海神の怒りを鎮めましょう。
尊い御身には、大切な使命があります。
どうか、無事に成し遂げて下さい」

そう言うと、波の上に、
菅ーすがー（イネ科の植物。パピルスなどが有名）を八重、
皮を八重、絹を八重に敷いて畳にし、
その上に飛び移ると、静かに沈んでいきました。

途端に波は凪ぎ、無事に上総国に渡った倭建命でしたが、
突然、妻を失ったショックは、早々にぬぐい切れるものではありませんでした。
その地から動く事が出来ず、毎日海を見つめ続けていたその７日後、
弟橘比売命の櫛が、倭建命の元に流れ着きました。
その櫛を拾うと、倭建命は、造った陵に収め、
丁寧に祭ったと書かれています。

古来より、櫛には魂が宿るとされています。
その身を、海神に捧げた弟橘比売命は、
魂となって、愛する夫の元に帰ってきたのです。

ご神徳　開運
　　　　　商売繫盛
　　　　　縁結び