大舞台での本番、一発勝負。
血管に氷が流れているのでは
と思えるような、
背筋が冷たくなるような緊張感。
誰もが固唾をのみ、
その場で針が落ちる音すらも
聞こえるような静寂の中、
次に訪れる瞬間は
勝利か敗北の二択のみ!!
そんな失敗の許されない場所で、
普段の実力以上の実力を発揮して
見事に勝利をつかむアスリートたち。
その集中力、精神力に
私たちはいつも感動を覚えますよね。
彼らほどではなくても、
私たちも、
驚きや危機感にかられた時、
心のサイレンが鳴り響き、
「うわっ、まずい、なんとかしなければ!!」
そんな心の声を聞くまでもなく、
無意識のうちに体が反応した時、
不思議なもので、
普段では考えられないような
力を発揮できることがありますよね。
いわゆる
「火事場の馬鹿力」
というやつです。
火事や地震などの災害時に、
寝たきりの人が
飛び起きて自力で逃げたとか、
重いタンスや金庫を持ち出したとか……。
「マンガじゃないんだから・・・」
とバカにすることなかれ。
この火事場の馬鹿力は
科学的に立証されたものだそうです。
それはさておき、
アスリートたちの世界にお話しを戻すと、
思わぬ絶体絶命のピンチ、
敗北確実と思える時、
緊張感で金縛りになりそうな
土壇場の瞬間、
それらに向けて、
プロはどのように考えて
日頃、準備をしているのでしょう。
それがわかれば、
私たちもいつ発動するかわからない
「火事場の馬鹿力」
に頼らなくても、
実力で危機を乗り越えて、
ここ一番の一発勝負に勝つことが
できるようになるかもしれませんよね。
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2020年2月になくなった
野村克也さん。
(このブログでは以降、あえて
「野村監督」と呼ばせて頂きます。
野村監督に関する詳細はこちら)
彼の勝負についての考え方は
以前、このブログでご紹介しましたが、
(恐れるな!考えろ!そして勝て!! / 野村克也の世界 I)
今回は、彼の言葉から
土壇場の切り抜け方、
土壇場で取るべき態度、
土壇場に向けての備え方、
について学んでいきたいと思います。
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「土壇場を乗り切るのに
必要なのは勇猛ではなく、
冷静な計算の上に立った
捨て身の精神」
(野村克也)
厳しいプロの勝負の世界はもちろん、
私たちの日常生活においても、
望む、望まざるに関わらず
土壇場
というものは訪れるものですよね。
そして、
もしかしたら私たちの多くにとって
今、現在の社会状況は、
その時なのかもしれません。
そんな土壇場にあって一番大切なことは、
自分のおかれた環境を
他人や環境のせいにして
嘆いてばかりいるのではなく、
身がすくんで動けなくなるのではなく、
頭に血が上って正気を失い、
勘違いした「勇猛」精神で
何も考えずに無策のまま
行動するのでもなく、
冷静になること。
その上で、
自分のおかれた環境、
自分の取っている行動、
自分の能力、
自分に取って大切なもの、
自分はどうあるべきなのか、
それらを客観的にみつめて、
自分の取れる行動、
取るべき行動を
しっかり計算し導き出してから、
断固とした勇気と
やるという意思と
やれるという自信
を持って結果を恐れずに
「捨て身になる」
そして
「開き直る」
こと。
「『開き直り』とは、
その瞬間に自分の持っている
すべてを出しきり、
燃焼すること」
無策のまま猪突猛進するのは
ただの「蛮勇」。
自分のやるべきこと、やれることを
開き直って、無心になって
全てをやり通して、あとは
人事を尽くして天命を待つ
そんな当り前のようなことを、
当り前にできる選手が
勝負強い選手であり、
当り前にできる人間が
土壇場に強い人間、
確かにそういうものですよね。
「やけくそはギブアップ、
開き直りはチャレンジ」
そんなふうに語った野村監督が
もう一度だけ、
私たちの前に現れてくれたら、
きっとこんなふうに言うのでしょう。
「いいか?
正しく開き直りができる人間が
勝負に勝つんだよ。
やけくそは何も考えない行動。
自分はなぜそう行動するのか?
そこに根拠がない
ただのギャンブルだよ。
そんなことは勝負をあきらめた人間が
投げやりになってやることだ。
『やけくそでも根拠がある』
だと?
直感のことか?
直感を使うのは悪くは無いが、
使い方と使いどころが大切だ。
開き直りは
『思考』『決断』『勇気』
の産物であり、
これらが揃った上ではじめて、
必要ならば『直感』を使え。
その後は開き直って全力を尽くせ。
後悔するな。
そうすれば必ずお前は、
勝つ」
そう言った後の、
彼の皮肉っぽい笑い顔が
目に浮かびますよね。
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「重荷があるからこそ、
人は努力するのである。
重荷があるからこそ、
大地にしっかりと足をつけて
歩いていける」
人はそれぞれが自分の人生を
背負って生きているもの。
そしてそれは
背中にずっしりと重いもの。
だからこそ、
負けたくない、
負けるわけにはいかない。
そういうものですよね。
勝負強くあるために、
土壇場に強くなるために、
必要なことは何でしょう?
野村監督はこう語りました。
「大事なのは予測能力。
『読み』である。
私に言わせると、
『読み』は
①見る ②知る ③疑う ④決める ⑤謀る
の五つの段階から成り立っている。
この能力を身につけられるかどうかは、
『他人よりいかに多く感じる力に優れているか』
にかかっている」
野村監督の語る「読み」の5段階。
「見る」「知る」
これは外部の状況、情報を
冷静に正しく、客観的に取り入れること。
その上で
「疑う」「決める」「謀る」こと。
これらは自分の中の思考であり、
個人の感性や能力に
左右されるかもしれませんね。
そして、
「天はそれほど気前よくはない」
厳しいプロの勝負の世界はもちろん、
私たちの日常生活においても
天才的な才能を発揮できる人物など
ほんの一握りのものでしょう。
だから、もし
天からその能力を
あまり授かっていなかったとしても、
それもまた当り前のことであり、
嘆いたところで
何が変るものでもないもの。
無いものは無い。
無いなら無いで
そこからどうするか。
自分の持って生まれたもの、
自分の背負うべきものを背負って
たゆまず努力を続けること。
シンプルに
そういうことかもしれませんね。
日本のプロ野球の
80年以上の歴史において、
選手、監督の両方で3000試合出場
を達成した唯一の人物
(選手として3,017試合、監督として3,204試合)
だからこそ言える、
重みのある言葉たち、
受け止めていきたいですね。
そして、そんな私たちに野村監督は
きっとこう言ってくれるでしょう。
「勝負強くあれ!土壇場に強くなれ!」
【現役時代の野村監督。懐かしい背番号19】
試合出場数だけでなく
通算サヨナラ本塁打:11本 (歴代2位)
通算サヨナラ安打:19本 (歴代2位)
と勝負強さも抜群の現役時代でした。
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「火事場の馬鹿力」について。
人の体は筋肉や骨に負担を
かけすぎないように、
平常時に発揮できるパワーは
無意識のうちに、
70~80%のところで
抑えてしまっているそうです。
ところが、
脳が「緊急事態宣言」を出すと、
アドレナリン
と呼ばれる、
人を興奮状態にして、
エネルギー代謝や運動能力を
飛躍的に高める
ホルモンが大量に放出されて、
人は自分が本来持っている
潜在的な能力までを
一気に発揮できるようになるそうで、
しかもこの興奮状態では、
βエンドルフィン
と呼ばれる、
気分の高まりや
幸福感などをもたらす
ホルモンも分泌され、
(モルヒネの数倍もの鎮痛作用があるそうです)
これによって、
火事場の馬鹿力が発揮されている間は、
痛みすら感じないことが多くなります。
そして、
この火事場の馬鹿力状態の
興奮からだんだん覚めていくと、
βエンドルフィンの分泌が減少して
脱力感にかられたりして
腰を抜かしたり、
あまりの痛みに悶絶したり
することも多いそうです。
ある意味「諸刃の剣」である
火事場の馬鹿力。
そんなものはあまり頼りにせず、
絶体絶命の土壇場にも
冷静に対処していけるよう、
普段から実力を養っておきたいものですね。
「火事場の馬鹿力」
についてはこちらのサイトを参照させて頂きました。