「解離とは、心身の統一がバラバラになる現象である。
トラウマだけで生じるのではないが、トラウマに遭遇したときにもっとも生じやすい反応なので、トラウマとは切っても切れない関係にある。
解離というこの心の働きは、大きな苦痛をともなう体験をしたとき、心のサーキットブレーカーが落ちてしまうかのように、意識を体から切り離す安全装置が働くことがもともとの基盤になっている。これは次のように説明されている。
人はかつて、どちらかというと弱い生き物であった。
たとえば肉食獣に噛まれ、まさに捕食されそうになったとき、噛まれた苦痛でパニックになっていては逃げられる可能性は低くなる。
このような危機的瞬間に対処できるように、苦痛の回路を遮断してしまう安全装置が備わったという。さらに、いよいよ逃げられなくなったときには、苦痛を遮断して楽に死ねるように安全装置が働くのである。
時間体験も変化する。
…スローモーションのように、数分の一秒の間に、いくつもの場面がゆっくりと無機質に認識される。
この意識の切り離しは場合によっては、体から離れて、外から見ているという体験に発展することもある。
たとえば性的虐待で、性交を強いられている自分を、天井から眺めていたり、ベッドの下に潜り込んで見上げていたりという経験をしている被虐待児は少なくない。
意識を体から切り離してしまえば、苦痛を感じなくてすむからにほかならない。解離もまた人間だけの現象ではない。
有名なのは、狸がショックを受けたときに仮死状態になるいわゆる狸寝入りである。」
以下の書籍、105-106Pより
発達障害のいま (講談社現代新書)/杉山 登志郎
