在宅医療市場には「レンタル契約」しか存在しない。少なくとも当社以外は。

ではなぜ「レンタル」が選ばれるのか。

市場にレンタルが定着した経緯は改めて書こうと思うが、レンタルから離れられない理由がそこにはある。



レンタル商品の代表格、ダスキンのフロアモップ。

レンタルビデオを何十年も借りっぱにしにする人はいないが、ダスキンのモップやマットは何十年もレンタルされているケースが少なくない。

では何故か?

モップのレンタル料金にはモップ本体、だけではなく、洗濯や交換などの付加サービス料金が含まれている。

ホームセンターでモップやマットを買ってくればコストは大幅に削減できる。しかし誰が洗濯や交換をするのか?

すっかりレンタルが定着した今、目先コストが下がるとしても、ほとんどの企業がレンタルから離れられなくなっている。

しかし「レンタル」と言う概念が最初からあった訳ではない。

ダスキンが創業した当初は「雑巾は使ったらすぐに洗って干すものだ」、「誰が使ったか分からない雑巾なんて不潔」と言った考え方が一般的だった。

その中に果敢に斬り込んで行ったダスキン創業者、鈴木清一氏の物語は少年時代の僕の心を打った。

僕が幼い頃、父がダスキンと同じダストコントロール事業を創業した。

小学生の頃から休みには工場でマットやモップの洗濯を手伝った。ドロドロのマット、汚物をたっぷり含んだモップ、ウジ虫が沸いたロールタオルが毎日何百kgも入ってくる。

それでも、鈴木清一氏が「レンタルモップは清潔だ」と自ら口にくわえて営業に回った話を聞かされていたから、僕は無心で洗濯に従事した。

その後すっかりレンタルが定着したダストコントロール業界にも変化が訪れる。

高校生になると工場から営業に出された。30人程の営業社員がいたが売上トップを取る為に必死で店舗を回った。

どこよりも沢山汚れを取って清潔なマットやモップを提供する。自社開発製品と自社工場での洗濯。幼い頃から仕事を手伝い、間近で開発に打ち込む姿を見てきたから自ずと営業にも力が入った。

しかしバブルが崩壊した市場は様相を変えていた。

過当競争。マットやモップのレンタルが当たり前になった市場の営業先では、製品説明ではなく「いくら?」と値段だけを聞かれた。糸の種類や織りの技術、洗濯の行程や吸塵オイルの事など全く話す機会はなかった。

更にはマットやモップに求められる機能も豹変した。

本来は沢山汚れをとるためのものなのに、コスト削減の為に毎週の交換していた周期が毎月になり、連れて1ヶ月使える=汚れにくいマットやモップにニーズが集中した。

ダスキンもマーケットのニーズに応えて汚れにくいお洒落な製品を投入した。素材もアクリルからナイロン糸に変り、吸塵オイルの質なんて最早どうでも良い話と化した。

そしてダスキンのフランチャイズシステムは破綻した。父の会社も閉鎖を余儀なくされた。




在宅医療市場はダストコントロール市場と共通点が多い。

ハードのレンタルだけではなく、ソフト(付加サービス)がニーズの大部分を占めている。

過当競争のプロセスも似ていて、いきなり「いくら?」と聞かれる事も少なくない。

だから僕は早い段階でハードとソフトを切り離して考えるようになり、ハードとソフトを別々に契約するフォーマットを採用した。

ホームセンターで買ったマットやモップでも洗濯と交換業務だけ受託しますと。

つまり機器は安く買ってください。だけど患者様のために医療サービスだけはしっかりやらせてくださいと言う内容だ。

こうすれば、製品もサービスも質を落とすことなく無駄なコストが削減できる。少なくともダスキンや父の会社の轍は踏まないだろうと。



写真左は14年前に販売した酸素濃縮器。

60万円程度の製品を5年リースで購入いただいた。もし相場の月額25000円ぐらいでレンタルしていたら14年間で400万円以上は支払っていただろうから、およそ350万円ものコストが削減できた事になる。

ちなみにこちらの医療機関様は10台程リースで利用されているので削減コストは驚くべきものとなる。

もちろん、ハードは購入いただいているが、機器の技術的サポートは当社が受託させていただいているから医療機関の業務的負担が増えることは無いし、マットやモップのように品質を落とす必要もない。

ただかつてダスキンがそうであった様に、すっかり「レンタル」が定着している在宅医療市場で「リース」の概念を普及させるのは簡単な事ではない。

今日、営業同行で数件の医療機関と商談をしながら、ふと鈴木清一氏の顔が思い浮かんだので記事にしてみた。