近年、酸素濃縮器やCPAPの個人購入に関するお問い合わせが増えている。
理由は、保険診療の自己負担額と個人購入の金額に逆転現象が生じているためだろう。
例えば在宅酸素療法の診療報酬は
指導管理料 2400点
酸素濃縮装置使用料 4000点
携帯用酸素ボンベ加算 880点
デマンドバルブ加算 300点
材料加算 100点
合計7680点(1点=10円)となる。
自己負担が3割の患者様なら、在宅酸素をするだけで毎月23000円を窓口で支払う必要がある。
もちろん他の診療や検査、処置に加え薬の費用も必要だからなかなかの経済的負担だろう。
一方自費購入なら60万円程度(在宅医療機器展示センター)だから5年使うとする月額1万円ほどの負担に抑えられる。
機器はしっかりメンテナンスさえしておけば10年以上余裕で使えるから保険診療よりもずっとお得という事になる。
CPAPの場合もこれに近い逆転現象が生じているし、保険診療を受ける上で義務付けられる定期受診が面倒という声は、特に労働世代の利用者が多くを占めるCPAPに多い。
「個人購入すれば、費用も抑えられるし、定期受診も不要」
魔法のような魅力的な話。もし自分が酸素やCPAPが必要な体になったならば確実に購入を検討するだろうが、現時点で一般市民が自費購入する事はお勧めできない。
先ず、医学的リスク。
空気中に普通に漂う酸素と言えど、高濃度なものは医薬品として扱われる。
病院で吸入する酸素ガスには「日本薬局方酸素」と表記されている。
医薬品には作用に伴う副作用を検討すべきだから、息苦しいからと言って無暗に酸素を吸えば良いという話ではない。
具体的な例を挙げると、内呼吸では肺の中で血液中に酸素を取り込み、同時に二酸化炭素を吐き出す作業が行われているが、呼吸器系疾患の方は、酸素を取り込む能力が低下するだけではなく、二酸化炭素を吐き出す機能の低下も懸念される。そうした方が、無暗に酸素を吸うと血液中の二酸化炭素量が急激に増えてしまい、意識障害など中枢神経症状を引き起こす。いわゆるCO2ナルコーシス。放置すると死に至る緊急性の高い病態だ。
CPAPの場合も同様にリスクがあるから、個人購入に際しては必ず医師の処方や診断書を提出することが義務付けられている。病態は刻々と変化するから購入の為だけに一時的な診断書や処方を出してくれる医師も少ないだろう。
だから、単に「安いから」という理由で安易に購入を考えるのはお勧めできない。
「誰が使ったモノかわからないレンタル品を使いたくない」的な要望なら購入を考える前に、主治医を通じて医療機器業者や酸素業者に「新しいのにしてほしい」とリクエストしてみたら良いと思う。必ずしも要望が通るわけではないが、タイミングが良ければ新品が回ってくることもあるだろう。医師による指導管理を受けた上で、職場用や学校用に一台追加購入する事は何の問題もないだろうが、この場合もいちど主治医や業者に相談してみて損はないと思う。
それでも、どうしても「自分専用機」が欲しいという方は、ご相談下さい。
何ともならないかもしれないけど、何とかできるかもしれませんので。
写真は「自分用酸素濃縮器」(廃棄品のリサイクルですが)。現在は逆配管にして登山(高地)トレーニング用の低酸素テントとして使っています。もし自分が酸素を必要とするカラダになったなら、正配管に変えて高酸素テントとして使うことになるだろうし、これが商品化できれば患者様が鼻孔カニューラやチューブから解放される画期的な製品になるでしょう。ただテント内の酸素濃度と炭酸ガスのコントロールがなかなか難しくて・・・。

