見た目 | shingo722のブログ

shingo722のブログ

ブログの説明を入力します。

 「見た目」
 
 その奇妙な緑色の物体は一瞬、僕に煮込まれた昆虫の残骸を思わせた。しかしそのグロテスクな目の錯覚から立ち直ると、それが炒めたほうれん草だと言うことがわかった。茎の部分が殆どそのままの形で残っていたため、それがバッタか何かの脚に見えたのだった。
「ちなみにこれは何ていう料理なのかな?」
 僕は恐る恐る聞いてみた。
「こちらペペロンチーノ・ほうれん草のソテー掛けとなります」
 彼女は高級レストランの店員よろしく、少し気取って答えた。
「オリジナル?」
「そうよ。ほうれん草の緑とタカノツメの赤のコントラストまでちゃんと考えてあるんだから」
 彼女はそこでフフンと鼻を鳴らした。
「これは…食べた方が良いのかな?」
「ん?」
「いや、ほうれん草とタカノツメは一緒に食べた方が良いのかな?」
「そうね、その方がきっと美味しいわよ」
「きっと?」
「初めて作る料理なの」
 僕は覚悟を決めてそのエキセントリックな彼女の創作料理を口に運んだ。
「ん?美味しい」
 僕はその見た目と味のギャップに驚愕した。
「当たり前じゃない。私を誰だと思っているの?」
 彼女は鼻歌混じりに、これまた見たことのないデザート作りに取り掛かっている。彼女はおそらく見た目には頓着しないタチなのだろう。もしくは、美的センスが少し人の斜め上をいっているのだ。世間一般的に見て決して男前とは言えない、僕を選んだように。