明日 | shingo722のブログ

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 「明日」
 
 書けない日が続いていた。机の前に座り原稿を前にすると頭の中には白いモヤがかかったようになり、さっきまでハッキリと浮かんでいたハズの言語は、まるで近視の人が見る景色のようにぼんやりと輪郭を失い視認できなくなってしまった。
 窓の外からは子供たちの遊ぶ声が聞こえる。近くに公園があるからだ。遠くの方から豆腐屋のラッパの音がする。日本の典型的な夕暮れの風景だ。しかし、そんな何もかもが僕の神経を逆撫でした。もう夕方の5時だ。子供たちの親は何をしているんだ?早いところ家に連れて帰るがいいじゃないか。家内が今日の夕食は何がいいかと尋ねて来る。何でも。君の好きなものにするがいいよ。僕は極力苛立ちを悟られないように声を抑えて言ったが、彼女は何かを察したようにスッと奥へ引っ込んだ。こういう時の僕にはあまり関わらない方がいいということを経験的に知っているのだ。
 夕食が済んで書斎に戻ってからも、物語は僕の元を訪れなかった。何も浮かんで来ない頭の中を先ほどの豆腐屋のラッパの音が響いていた。時計が深夜0時を回り僕は何杯目かのコーヒーを飲み、カップをソーサーの上にガタンと音を立てて置いた。駄目だ、今日は寝よう。明日になれば何かいいアイデアを思い付くかも知れない。僕はベッドに入ると自分に言い聞かせるように何度も呟いた。明日になれば。明日になれば。