ある気持ち良く晴れた昼下がりに | shingo722のブログ

shingo722のブログ

ブログの説明を入力します。

 「ある気持ち良く晴れた昼下がりに」

 ある気持ち良く晴れた昼下がりに、僕は死ぬ事にした。朝日の差し込む温かい部屋の中で、僕は簡潔に身支度をして部屋を清潔に整え、後に迷惑がなるべく掛からないようにした。もちろん出来る限り、ということだが。
 僕は部屋を出る前に何となくテレビを付けてみた。この世に未練があると言うわけではないが、それでも死ぬ前にこの目に何かを焼き付けようとしたのだった。テレビの中では様々な状況で連日のように人が死んでいた。災害で、事故で、人の手によって。それでも共通していることは、おそらく彼や彼女たちはもっと生きたかっただろう、ということだ。僕はこの上なく安全な場所で、この上なく良い天気の日を選んで死ぬことにした。自らの手によって。
 人は僕を声高に責めるかも知れない、もっと生きられただろうに、と。後に残された人間のことを考えなければならないと。しかし僕はこの上なく平和な場所で、この上なく切実な理由を持って死ぬことにしたのだ。おそらくは、ほとんどの人が理解に苦しむような理由で。また、ほとんどの人が理解に苦しむから、という理由で。
 僕はハイキングへ向かうような格好をした、幸せそうな家族連れで賑わう電車に乗って目的の山へと向かった。彼らとは違う理由で。