「選択」
何かを選び取るということは、そこにあったかも知れない別の可能性を捨て去る事でもある。人は何かを手に入れたときそれと同時に何かを失っているのかも知れない。
「どうして私を選んだの?」
彼女は聞いた。
「どうして私でなくてはならなかったの?」
彼女は泣き腫らした目をしていた。
「何かあったの?」
「別に、何も」
彼女は目を逸らして言った。
「私があなたの可能性を潰している、そんな気がしただけ」
「月並みな言葉かも知れないけれど」
僕は言った。
「誰にも正しい選択肢がどれだったかなんて分からないよ。自分が選んだ答えを正しい道にしていくのが人生なんじゃないかな」
「私は嫌いじゃないわよ、あなたの一般論」
彼女は微笑んで言った。
「僕が言ってるんじゃない、世の中が言っているんだ」
僕はわざと難しい顔をして言った。
「でもそれに救われることもある」
「それは良かった」
「なんだか悔しいわね、年下のくせに」
「年齢は関係ないよ、一般論だけれど」
朝の光が夜の間に蓄積された不安や悩みの粒子を分解していく様だった。僕たちはサッとカーテンを開くと朝の眩しい光に包まれながら朝食を食べる事にした。