顔だちについて | shingo722のブログ

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 「顔だちについて」
 
 取り立てて破綻の無い顔だちというのが、世を占める大半の人々のそれなのかも知れない。彼らは醜いと言われることは無い代わりに、特に人目を引くことも無い。しかしもし仮に世界中の人々のひとりひとりがドラマチックで個性的な顔だちをしていたなら、それはそれで面白い世界ではあるのかも知れないが、少し目が疲れてしまうだろう。そういう意味では彼らは一部の特徴的な顔だちの人々のための引き立て役となって世界のバランスを取っているのかも知れない。そして何を隠そう僕もその無個性という名の匿名性を背負って大衆に紛れる人間の内のひとりである。
 小さな頃からとにかく目立たない子供だった。内気であるというのもその原因のひとつなのかも知れないが、そこにいれば自然と目立ったり人々を惹きつけるというタイプの顔だちでは無いのだ。当然のことながら学芸会では木や森の動物たちのうちの一匹といった脇役をやった。そしてそれは実に僕の性に合っていた。
 大人になってからもその人目を引かない性質は変わらず、街に出れば人々が生活する背景の一部となり、待ち合わせではよく相手に目の前を素通りされたりした。
 だから一体どうして彼女が僕のような「その他大勢」の内の1人を選んだのかさっぱり分からなかった。
「確かに特別目立つ顔だちとは言えないかも知れないわね」
 彼女は好奇心に満ちた小動物のような目つきで僕の顔を様々な角度から眺めながら言った。彼女は大きくて美しい一対の目と小さくて少し上を向いた鼻、そして意志の強そうに引き締まった口元という実に勢いのある顔だちをしている。自然と一座の中心となるような魅力を持っていたし、何人かは彼女に異性としての好意を持っていたはずだ。彼らもやはり彼女が僕を選んだことに首を傾げていた。
「でも私には分かるのよ。あなたのその平凡な顔に隠された、私のためだけのメッセージみたいなものが」
 彼女のその褒めているのかけなしているのかよく分からない言葉を聞きながら、世の大多数を占める平凡な人間にもそれぞれの与えられた天命の様なものがあるのだということを、今さらながらに僕は感じていた。