沈黙 | shingo722のブログ

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 「沈黙」
 
 耳障りな沈黙は際限なく僕の神経を逆撫でした。その沈黙はどこまでも無神経で攻撃的だった。そしてそれは僕が幼い頃から始まり学生時代を経て会社で働くようにってからも機を見て僕のもとを訪れた。公園で一人遊びをしているとき、学校の教室で、会社の食堂で、やかましく僕を責め立てた。ここはお前の居場所じゃない、お前は違う、お前は違う、と。それは他者の視線を通して、僕には届かないヒソヒソ話を通して僕の脳に直接語りかけて来るようだった。
「あなたってとても無口なのね」
 彼女は特有の透き通るような声で言った。
「ごめん」
 僕はビクッとして言いながら咄嗟に話題を探したが指先には何も触れなかった。
「いいのよ謝らなくたって」
 彼女はクスクスと可笑しそうに笑いながら言った。
「あなたといると心地良いわ、とても静かで。無理に話を広げなきゃって焦る気持ちにもならないし」
「そんなものかな」
「とても立派な才能よ」
 彼女は励ますように言った。
 彼女と居ると不思議と寛いだ気持ちになることが出来た。周りの視線や聞こえることのない声に怯える必要も無かった。
「今度図書館でデートするのも悪くないかもね、二人で黙って熱心に本を読むの」
 そう言って笑う彼女を横目に見ながら、生まれて初めて沈黙に親しげに話しかけられた気がした。