シミ | shingo722のブログ

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 「シミ」
 
 ある日の午後、僕はアパートの部屋の畳の上に仰向けになって天井を眺めていた。その日は特に予定は無かった。ただ午後の時間が過ぎてゆくのを眺めていただけであり、たまたま視線の先に天井があっただけであった。
 そのシミは最初天井の端に1つ2つ、僅かに見えるだけだった。大きさにして小指の爪ぐらいだろうか。こんなところにシミがあったんだ、そう意識の端で考えただけで再び僕の思考は茫漠たる時の流れに押し流されて行った。
 再びそのシミに意識を留めたとき、僅かな違和感が僕をとらえた。さっきよりシミの範囲が大きくなっている気がする。より正確に言うなら、ポツポツとあったシミの数が少し増えた気がしたのだ。しかし元々どれほどの範囲のシミだったか確証が無かったので、それほど僕は不思議には思わなかった。少しうつらうらとしてからまたそのシミに目を留めたとき、僕はギョッとした。今度はハッキリとシミの数が増えているのである。最初僕は上の階の水漏れなどを疑った。しかしそれはどう考えてもおかしなことである。なぜなら僕の上の部屋には誰も住んでおらず、こんなことが起こったのは越して来てからのこの2年で初めてだったからだ。僕は管理人に電話しようかどうか考えた末に面倒になってやめた。僕は何事によらず面倒くさがり屋であり、もう少し事態の進展を見守ってからで良かろうという結論に達したのだ。
 そう決めてしまうと僕はゴロリと寝返りを打ち、身体を横に向けて深い睡眠に入った。しかし、僕の意識は天井のシミを離れることは無かった。悪夢を見たのだ。その夢の中で僕の身体は天井と床から出る無数の黒い手に絡め取られており、どこか別の次元のようなところへと引き込まれようとしていた。なぜこの様な目に遭わなければならないのか僕には全く分からなかった。夢の中で僕は声にならない声を上げ、その身体中を駆け巡る内なる衝撃で目を覚ました。僕はぐっしょりと汗をかき、目を見開いて天井を凝視していた。自分が実際には悲鳴を上げていたことが喉のヒリつきでわかった。そして僕は再び驚くことになる。天井にはそもそもシミなんて無かったのだ。もはやどこからどこまでが夢かがわからなかった。最初天井にシミをみとめたときには確かに覚醒していたはずなのに。僕は水道のところまでいきコップに水を注いで続け様に2杯飲んだ。まだ身体に無数の黒い手の感触が残っていた。どうしてもそのまま眠る気になれず(再び悪夢を見る気がした)、僕はしばらく真夜中の街へとあての無い散歩に出掛けることにした。