お見合い | shingo722のブログ

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 「お見合い」
 
 こんな時代にお見合いも無いだろうと思いつつ、両親にせっつかれる様にして僕はその席に着いた。ひとつには何かの話のタネにでもなるだろうという気持ちと、もうひとつには相手方のお見合い写真に映っていたのがとんでもない美人だったということもある。今は写真の加工技術も上がっているからあながち信用ばかりは出来ないが、いずれにせよ、僕は軽い気持ちでその日のお見合いを承諾した。
 しかし当日、自分の向かいに座った女性を目にして仰天した。写真どころでは無い、他ではまたとお目にかかれない程の美人が僕の前に座っているでは無いか。僕は半ば放心状態で軽い自己紹介を済ませた。
「それでご趣味は?」
 僕はお見合いの形式に従って人々が何万回と口にして来たであろう質問をした。
「人間観察です」
 彼女は間を置かずに答えた。それぞれの両親の顔に動揺が走ったのが見えた。
「人が困っている顔や苦しんでいる顔、焦っている顔など、とにかくあらゆる表情、仕草を観察するのが趣味なんです」
 彼女は嬉々として言葉を続けた。
「初めて観察に興味を持ったのは小学校の時にカエルを解剖したときで、そのとき鋭いメスで切り裂いたカエルのお腹から色鮮やかな内臓が見えたときなんか私興奮しちゃって…」
「ヨシエ、そのへんにしておきなさい」
 父親が厳しい顔で静止しなければ彼女はそのまま2時間でも3時間でも喋りたそうだった。
「とにかく私、自分の趣味に付き合ってくれる男性を探してるんです」
 彼女の両親が同時にため息を吐くのが聞こえた。どうやら彼女は何度もこのあたりでつまずいた経験があるのだろう。
 お見合いの最後、彼女の両親が半ば諦め気味に「どうか前向きに検討をお願い致します」といって深々と頭を下げたとき、僕は即答で、
「もちろん!僕が探し求めていた女性が現れたんですから」
 と言った。お互いの家族が仰天する中、僕は嬉しくてたまらなかった。なぜって僕の“被験体趣味”にぴったりと当てはまる女性なんて、彼女を置いて他にいないだろうから。