冬の月 | shingo722のブログ

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 「冬の月」
 
 冬の白くて小さな月が夜空に浮かんでいる。僕と君は手を取り合って白い息を吐きながら寒々とした空気を切り裂くように散歩を続けている。
「見て見て!」
 小走りに少し先にある街灯の下まで駆けて行った君が僕の方を振り返ると、跳んだりクルクル回ったりしながら叫んだ。
「上手だね」
 君の早足の散歩に合わせるだけで精一杯の僕は息を切らせながら、それでも心の底から君のダンスを褒めた。
「昔少しだけね、日本舞踊を習っていた事があるの」
「日本舞踊?」
「小さな頃だけれどね。でもすぐに辞めちゃったらしいの。どうやら私、なんでも自分なりに色々とアレンジしちゃうクセがあったらしくて、全然先生の言う通りに踊れなかったのね。だから先生も匙を投げちゃったわけ」
「君のダンスはとても個性的だし、すごく心惹かれるものがある」
 僕が言うと、君は得意げにその場でクルリと回ると丁寧にお辞儀をした。まるで大きな劇場での公演を成功のうちに踊り終えたバレリーナのように。
 そんな君と僕の姿を冬の月はクールに中立的に見下ろしている。でも何と言っても僕たちにとってその日々は紛れもない輝かしい瞬間の連続に他ならなかった。まるで劇場で繰り広げられる一流のバレエ劇団の公演のように。全ての瞬間に意味と価値があったのだ。