「夜明けの森」
遠くで名も知らぬ鳥が鳴くのが聞こえた。僕たちは夜明けの森の中を二人、静かに歩いていた。鳥たちは僕たちの訪れを歓迎していないのだろうか。それともただ、中立的に木々の上から見下ろしているだけなのだろうか。僕はたまに地面に落ちている木の枝を踏んでしまい、パキッという乾いた鋭い音を立てて周りの鳥や昆虫、動物たちを驚かせてしまったのではないかと、その度にヒヤヒヤして辺りを見回した。彼女は僕のそんな様子をおかしそうに見ながら言った。
「大丈夫よ、彼らはきっと私たちのことを歓迎してくれているんだから」
「わからないよ」
僕は頬を赤らめて言った。
「森の生き物たちはとても用心深いから、僕たちを敵と見なすや今に集まって来て取って食うつもりかも知れないよ」
「そうなったらあなたが私を守ってくれるんでしょう?」
彼女は悪戯っぽく笑いながら言った。
「まあね」
結局は僕も笑いながら言った。そう言われてしまったら僕も降参せざるを得ない。
まだ日が昇り切る前の夜明けの森の中を僕らは手を取り合って歩いて行った。この世界にたった一人の味方であるお互いの事を守るように、ぴったりと寄り添い合う様にして。