雪山 | shingo722のブログ

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 「雪山」
 
 疲労は雪の様に降り積もっていった。一歩踏み出すごとに全体重を足の裏に感じた。極限の疲労状態の中僕が見たのは吹雪の中真っ白に染まった視界と走馬灯の様な思い出の日々だった。実家での毎日、学生時代のたわいもない友達とのやり取り、そして弟とのもう戻らないかも知れない仲の良かった日々…。
 母が亡くなったとき、葬儀のあと弟と口論となった。お互いに溜め込んでいたものが溢れ出し、激しい言葉となってほとばしった。それ以来彼とは疎遠になり、僕は逃げ込む様に山に魅せられていった。
 もう何度目の雪山か分からない。慣れたものだという油断もあった。僕は吹雪に視界を奪われルートを外れ、激しい疲労と寒さのため意識を奪われていった。そんな中やはり脳裏に去来したのは弟のことだった。
 死ぬわけにはいかない。弟に会ってもう一度言葉を交わし心を通い合わせるまでは、まだ母のところへ行くわけにはいかない。僕は決意し一歩また一歩とあの頃の日々に向かって足を踏み出していった。