「最後の人」
午前2時、街は深い眠りについている。昼間子供達で賑わった公園も、街路樹も、僕の部屋に面した大通りも、ごく稀に走り抜ける長距離トラックを別にすればひっそりとした眠りにつく。そんな深い静寂の中一人机に向かい文章を書いていると、自分がただ一人取り残されて星の終わりを見届ける、哀しい役目を担った人のように思える。もうすでにみんなはこの星に見切りをつけて脱出してしまったのだが、僕だけがただ一人星と運命を共にするつもりでいる。僕はそんな寿命わずかな星の上で一人机に向かい文章を書き、宇宙に向かってそれを発信し続けている。広大な宇宙の中に地球という美しい星があったということを。そこでは人々が恋人や家族と共に満ち足りた時間を過ごしたということを。星がその記憶と共に消滅してしまう前に、僕は文章にしてどこかの星の誰かに向けて発信し続けている。たった一人、永遠の眠りにつこうとする星の上で、深い深い静寂に包まれて。