「選択」
「ごめんなさい」
ひとしきり泣いてしまうと彼女は言った。
「泣くつもりなんかなかったの」
「いいんだよ」
僕は言った。
「泣きたければ泣けばいい」
「ええ。でも私にも悪いところはあったと思うし」
その晩彼女は遅くに帰って来るとリビングの椅子に座り静かに泣き始めたのだった。
「私の言い方も良くなかったのよ。ベテランのパートさんに対してもっと配慮すべきだったわ」
どうやら勤め先のスーパーのパート・タイムの女性と仕事のやり方で揉めたらしい。こう言った話を聞く場合、僕は2通りの態度の選択を迫られることになる。1つには僕はその場に居合わせなかったし、片方だけの意見を聞いて状況を判断することは出来ないとする極めて現実的な立場をとること。もう1つは全ての彼女の意見を受け入れた上で全力で彼女を肯定することだ。もちろん僕は後者を選んだ。
「君は悪く無いよ」
僕は断固として言った。
「自分のやり方に固執する相手が悪い」
「それは確かに周りもそう言ってくれるけれど」
彼女は徐々に落ち着きを取り戻しつつ言った。
「彼女のやり方に合わせてあげられなかったこちらにも落ち度があると思うわ。まぁ、今度副店長にでも相談してみようかしら」
やがて彼女は機嫌を直し、夜食に買って来た惣菜をテーブルに並べ始めた。どうやら僕は正解の方を選んだらしい。