別れ | shingo722のブログ

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 「別れ」
 
 三年間付き合った彼女と別れたとき、僕は三十七歳だった。もう結婚することはないのだろうなとぼんやりと思った。同棲していた部屋を出ていくとき、彼女は一切の荷物を残さなかった。ハンカチ一枚、靴下一足に至るまで全てだ。当たり前のことかも知れないが、それは僕をより一層空虚な気持ちにさせた。
「三十四歳までには結婚しようと思うの」
 彼女はそのとき三十一歳だった。
「あなたは多分結婚はしないんでしょうね」
 その言葉はある種の呪いであり、それと同時に慰めの言葉でもあった。彼女は諦めとも憐憫ともつかない微笑みを残して去って行った。玄関のドアが閉まるとき、彼女は外の光の中へ、僕は薄暗いアパートの闇の中に取り残されていた。
 座り込んだキッチンの椅子からふと時計を見上げると夜の七時だった。空腹を感じた気がしたが定かでは無かった。どちらにせよ、食事をする気にはなれないのだ。久しぶりに煙草が吸いたくなって近所のコンビニまで出掛けようかと思ったがやめた。誰にも会いたく無かったのだ。夜のキッチンで僕は一人、更けていく夜に身を任せていた。