深夜のケンカ | shingo722のブログ

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 「深夜のケンカ」
 
 「どうして?」
 彼女は言った。
「どうしてそんなことが言えるの?どうしてそうやって私の気持ちを蔑ろに出来るの?」
 そこから彼女は僕の目をじっと見て黙り込んだ。僕はうんざりした気持ちになって、出来ることならこのまま部屋を出て行ってしまいたいと思った。しかしそんなことは出来ない。今は夜中の2時だし明日も7時には起きて仕事に向かわなくてはならないのだ。僕はもう36歳であり、当たり前のことだがこれは学生時代の恋愛とはワケが違うのだ。当たり前のことだが。
「悪かったよ」
 絞り出すように僕は言った。
「何が悪かったの?」
 僕は手当たり次第に部屋の中の物を窓から外に放り出してしまいたい気持ちを何とかこらえながら、もう一度言った。
「とにかく悪かった。無神経だった。君の気持ちや都合や生理痛のことも考えずに…」
「私は人より生理が重い方だし、期間中は気持ちが余計に不安定になりやすいって前から言ってるわよね」
 彼女は涙ぐみながら切迫した声で言った。こうなってはもうお手上げだ。覚悟を決めて彼女が納得いくまで謝るなり寄り添うなりするか、あとは不貞寝を決め込むかのいずれかの選択肢しか僕には残されていなかった。
「本当に悪かったと思う」
 僕は前者の道を選んだ。当たり前のことだが。
「僕がどこまでも無神経で冷蔵庫の中の干からびた大根みたいにどうしようもないヤツだった。どんな事でもして償いたいと思う。」
「じゃあ今度の休み買い物に付き合ってくれる?」
 間髪入れずに彼女は言った。そのお笑い的な間の良さに触れるかどうかはさて置き、このチャンスを逃す手はない。
「もちろん、いくらでも付き合うよ」
 僕も負けずに即答した。
「じゃあ約束ね」
 彼女は鼻歌混じりに寝る準備を始めた。先程までの深刻さはどこに行ってしまったのだろうと思いながらも、買い物に付き合うぐらいのことで彼女の機嫌が直るなら、いくらでも付き合おうと僕は思った。当たり前のことだが。