時の止まった惑星 | shingo722のブログ

shingo722のブログ

ブログの説明を入力します。

 「時の止まった惑星」
 
 時の止まった惑星においては全ての物質が静止していた。僕は砂浜を歩きながらそんな様子を興味深く眺めていた。キラキラとした波打ち際の景色は美しく、ハイビスカスの花の蜜を吸おうとする名前も知らない南国の小さな鳥は羽を羽ばたかせる事なく空中に静止していた。
 僕はふいに心地良い風の感触を感じてあたりを見渡した。この全てが静止した惑星にあって風だけが自由だった。僕は風の声に耳を澄ませたが、それはあまりに小さく僕の耳には届かなかった。
 この星の人々は一体どこに行ったのだろう。海辺の街には民家が建ち並んでいたが、僕はついに人の姿を見る事はなかった。
 かつてこの星の人々はその景色のあまりの美しさにこう叫んだのかも知れない。「時よ止まれ、君はあまりにも美しい」、と。その願いは聞き届けられたが、人々は姿を消した。それが願いを叶えるための代償だったのか?理由はわからないが、とにかく神は人々の姿を地上に留めることをしなかった。
 僕は宇宙船に乗りその星をあとにしながら、ずっと想いを巡らせていた。誰にも見られる事なく美しい姿を留め続ける、その奇妙な惑星について。