「時の階段」
時は螺旋状に渦を巻き、長い長い階段となって宇宙の起源から(もしくはそれ以前の昔から)未来へと向けて伸びていた。それはあまりにも長い階段であるために上の方はモヤが掛かって見えなかった。我々はその階段の中腹あたりを息を切らしながら登り続けていた。
「あとどれぐらい登ればいいのかな?」
僕は案内人に尋ねてみた。
「さぁ」
彼は言った。
「それは私には分かりかねますな。それはあなたの志次第。あなたが望むものに比例してこの階段は長さを変えるのです」
僕は最早、最初自分が何を求めてこの階段を登り始めたのか見失おうとしていた。初めの志は長い階段を登るにつれボヤけ始め、やがて疲労にあえぎ惰性のままに僕はのろのろと階段を登り続けていた。
「もうここいらで辞めにしておきますかな?」
案内人の言葉が甘く鼓膜を揺らしていたが、僕は最後の気力を振り絞ってそれに抗った。
「もう少しだけ」
僕は言った。
「もう少しだけ登ってみるよ。後悔だけはしたくないからね」
僕は遥か彼方、階段の先の方へ手を伸ばしてみた。それはあまりにも遠く、僕は言ったそばから自分の言葉に自信を失いかけていた。あと少しだけ。僕は自分に暗示をかけるようにそう繰り返しつつ一段、また一段と階段を登り続けた。まるでそうする事で、ようやく自分自身を繋ぎ止めているかのように。