感情 | shingo722のブログ

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 「感情」
 
 不思議なことに僕は彼女の顔の細部を思い出すことが出来なかった。漠然としたイメージは浮かんでくるのだが、1つ1つのパーツを思い出そうとすると砂漠の細かい砂のようにサラサラと指の間から記憶の粒子がこぼれ落ちていった。そう、僕の記憶の中の彼女は顔を持たない。そこにあるのは薄いベールに覆われた“顔らしきもの”の存在だった。
 しかし、言うまでもなく僕は彼女のことを愛していた。それは別れてから時が経っても、いや時が経つほどに強い想いへと変わっていった。まるで記憶と気持ちが反比例するみたいに。
 あるいはイメージの消失は記憶という枠組みを越えて感情を飛翔させるための1つの段階なのかも知れない。たとえそれがある種の危険性を孕んでいるものだったとしても。度を越した感情はときとして人を傷つける。出来ることならその刃は自分に向けたい、僕はそう思っている。