休日 | shingo722のブログ

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 「休日」
 
 「どうして、洗濯物がまだ干したままになっているわけ?」
 妻は押し殺した声で言った。僕はわざと明るい声で答える。
「今やろうとしていたんだよ、ごめんごめん」
「夕方の6時に?もうすぐ夜よ。ほら、乾ききった洗濯物が夜露を含んでしっとりし出しているわ」
「そんなにしっとりしているかな?」
 やれやれ、こうなってしまってはもう手遅れだ。僕は妻が仁王立ちで見守る中、手早く物干し台の洗濯物を取り込んでしまう。本当はつい、昼寝をしたまま寝過ごしてこんな時間になってしまったのだが、妻のピリピリとした様子からなんとなく言いそびれてしまったのだ。彼女は家事の段取りが狂うことを極端に嫌う性質がある。あるいは世の中の妻という生き物は全てそのような性質を有しているのかも知れないが、あいにくと不勉強なため僕には分からない。
 部屋に入ると彼女は野生動物のような素早い目つきで部屋の中を見渡した。
「私の読んでる雑誌の順番が変わっているのはどういう事なのかしら?」
 まずいことになって来たなと心の中で僕は思った。いつもならまず手を触れることはないのだが、今日に限って昼寝の前の暇つぶしに雑誌のページをパラパラとめくってしまったのだった。
「さあね、見当もつかない」
「仕事で疲れて帰って来た私の段取りを狂わせて楽しい?」
 何度も言うが、こうなってしまっては手遅れだ。妻の機嫌が直るまでひたすら従順に言うことを聞くしかない。僕は彼女が風呂に入っている間にフレンチシェフも顔負けのスピードで夕食の準備を済ませた。風呂から上がった妻はまだしかめ面こそしていたが、いくぶん機嫌の良くなった様子だった。
「今日は肉じゃがも作ってあるよ」
「しらたきも入れてくれた?」
「もちろん」
「ありがとう」
 僕はしらたきを入れ忘れなかったことを神に感謝した。
「ちなみに冷蔵庫に白ワインも入っているけれど」
「いただくわ」
 このあたりから妻の顔に笑顔が見え始めたので僕はホッと胸を撫で下ろした。やれやれ、結婚している限り、休みの日だからといって気を抜くものではないよな、全く。