「理性と本能」
官能的な甘い疼きとは裏腹に頭の奥は冴え渡っていた。いつもそうだ。僕は行為に没頭している様でいて、どこかそれを俯瞰で見ているところがある。身体だけが野生の本能で動いていて、頭はまるで別の生き物の様に相手を観察していた。それは当然のことながら己が絶頂を迎えたあとでも継続している。一般的に言う賢者タイムとはまた違い、初めから野生の衝動のみに身を委ねたつもりはない。
「ねぇ、次はいつ会えるの?」
相手の声がケバケバしい内装の部屋に虚しく響く。ラブホテル特有の甘い香りがやけに鼻についた。
「そのうち、いつかね」
その声はまるで自分のものには聞こえなかった。
ホテルを出る頃にはもう僕はうんざりし始めている。僕は相手を駅まで見送ると足早に家へと向かった。早く一人になりたかった。