「親友」
彼は僕の暗く長い学生生活を通しておそらく唯一と言っていい友人であり、もしこのような表現が許されるならば親友であった。少なくとも僕の方はそう思っていた。僕はどうしても学校という集団行動を強制する場所が好きにはなれなかったし、ほとんど全ての学校行事が嫌いだった。校内マラソンなどの個人競技(それでも人によっては数人で集団を作って仲良く走っていたわけだが)だけが、僕が好んで参加出来るものだった。独りで黙々と走っているとき、僕は孤独では無かったし(そう、孤独とは状況では無く心の在り方のことなのだ)、また自由だった。
だから高校にあがり彼と離れ離れになったとき、僕の学生生活は色彩を欠いたものとなることは必然だった。
「元気でな」
中学校の卒業式の日、彼にそう言われたとき僕は、ほとんど泣き出してしまいそうだった。そこからの三年間を僕は心を殺すことでなんとか耐えた。ただ誰とも関わりたくなんかなかった。それから大学を出て(僕はそこの自由な雰囲気を好んだ。だからというわけでは無いが、留年までしてそこに長く居た)社会に出て今日に至るわけだ。
久しぶりに彼の顔を見て、その家族に会い(可愛らしい奥さんと可愛らしい子ども)彼の家のリビングで昔話をしているとき、僕はとても懐かしく、くつろいだ気持ちになることが出来た。そしてあらためて、彼のおかげで僕の人生はずいぶんと救われていたんだなと感じた。