「境界線」
眠りに落ちる直前まで本を読んでいたせいで、目が覚めてからしばらくの間、夢と現実の境界線が曖昧だった。自分が小説世界の主人公であり、数多の冒険を潜り抜けて来たような昂揚感がしばらくの間胸に残っていた。そこにはいくつもの冒険と、いくつかのロマンスがあった。しかし意識が覚醒するにつれて、やがて僕は僕であり、他の何者でも無く、ましてや主人公などでは無いという紛れもない現実が僕をどうしようもなく打ちのめした。
カーテン越しに朝焼けが差し込んで来ていた。窓の外を見ると朝陽が東の空から今まさに昇ろうとしており、世界を紅に染め上げていた。そう、今まさに世界も夢と現実と境界線上にいるのだ。
真紅に染まった夢のような現実の中で、僕は今しばらく、その境界線上でまどろんでいたかった。