破片 | shingo722のブログ

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 「破片」
 
 記憶のかけらに足を取られて長い間僕は歩き出せずにいた。その細かい破片は僕の足の裏の皮膚を切り裂き、そこから温かい血が流れた。そう、記憶はまだ生々しく、それによってもたらされる傷もまた、鈍く疼いて鮮やかな赤い血を僕に流させた。
 あとどれくらい、この記憶と向き合い続けなければならないのだろう?あとどれくらい、僕はこの喪失感に苛まれ続けるのだろう?キラキラと光るその破片はときとして眩ゆい太陽の光を反射して僕の目を射たので、そんな折には部屋のカーテンをかたく閉ざしてじっとしていなければならなかった。いつか時間が解決してくれる、そんな希望的観測は捨てなければならない。それが時間が僕に教えてくれた唯一のことだった。時間の経過はあてにはならない。
 僕はのろのろとベッドから這い出すと、分厚いカーテンの隙間から恐る恐る彼女の居ない世界を眺めた。そして一つずつ、記憶の破片を拾い集めいき、今ここにある物と自分自身と向き合うことに決めた。その鋭い断片で、指先を怪我しないよう気をつけながら。