「目覚め」
空を飛ぶ夢を見ていた。夢を見ている間、自分は鳥であることを信じて疑わなかった。そして目が覚めたとき、自分は地上に縛り付けられた人間であることに気が付いて、とても哀しい気持ちになった。生えてもいない翼をもがれたような気持ちだった。
明日など来なければいいとずっと思い続けて生きてきた。明日さえ来なければずっと自分は夢の中で自由に大空を羽ばたいていられるのに、と。僕にとっての夢の中は唯一自分を解放出来る場所であるのと同時に、ある種の逃避の場所であったのだ。それに気がついたのはずいぶん大人になってからだったけれど。
踏み締めた大地の感触が足の裏から伝わる。これは紛れもない現実なのだと何度も再認識させられる。そう、僕は紛れもないこの地上で現実を生きている。夢から覚めたばかりの淡い陶酔感を振り払うように、僕はこの世界で生きる覚悟を決める。