「時間感覚」
時間を紡ぎ出す糸が絡み合って、複雑な模様を描き出していた。アインシュタインが証明したように、時間は相対的なものだ。観測する人間の立ち位置によって感じ方は様々だ。それと同じように、人と人との出会いや過ごし方によって、時の流れは様々にその様相を変える。気の合わない人間と過ごす時間は途方もなく長く感じるのに、好意を寄せた人との時間は一瞬のうちに過ぎてしまう。
では彼女の方はどう思っているのだろう?僕の方で一瞬のうちに過ぎ去った時間も、彼女の方ではまた違う流れ方をしている恐れがある。相対性理論を借りて証明するまでもなく、それは相手の態度によって導き出されるはずだったが、あいにく僕の舞い上がった頭ではそれを察するに至らなかった。
店を出るとき「またね」と僕が言うと、「機会があればね」と彼女は答えた。そこに凝縮された時間の流れ方の違いを見た気がした。