「トンネル」
もうどれぐらい歩き続けただろう?僅かにふくらはぎが疼き始めていた。僕はかれこれ数時間、暗いトンネルを歩き続けている。あるいはもっと長い時間歩き続けているのかも知れないが、暗さとトンネルの狭さ、そして歩き続けるという行為によって時間の感覚はほとんど消滅していた。
僕は特に希望を持ってこのトンネルに足を踏み入れたわけでは無かった。これを抜けた先に美しい雪景色が広がっているだとか、ユートピアがあるだとか信じたわけでもない。僕には僕で、トンネルに入らざるを得ない状況的理由とでも言うべきものがあったのだが、それについては今あまり語りたくない。
僅かにトンネル内を反響する僕の足音が変化してきた気がした。あるいは出口が近いのかも知れない。もしトンネルを抜けたとして、そこには以前と変わり映えのない景色しか広がっていないとしたら?そう思うと僕は少し焦燥感を覚えたが、構わず歩き続けることにした。そう、どのみちこのトンネルは一方通行であり、後戻りすることは許されていないのだから。