「得意不得意」
球技というものが昔から苦手だった。みんなと野球やサッカーをするぐらいなら、黙々と1人で家の近所を走っている方が性に合っていた。
「集団行動に向かいないタチなんだよ」
僕がそう言うと彼女はいつも、
「いいじゃない、それもあなたの個性なんだから」
と慰めてくれた。ちなみに僕と彼女との出会いは、大学時代に僕が友人に誘われて渋々入ったテニスサークルだったから、そう考えると球技も僕にとって全くの無益なものとは言えない気がした。
「運動神経も良くないしね」
「人には得意不得意が合って当たり前でしょ」
そう言って彼女は笑った。球技が得意で活発で明るい性格だが、読書が苦手で僕が薦めた本を1冊も読み通したことのない彼女を見ながら、確かに人には得意不得意があってもいいんじゃないか、そんな気がした。