雪 | shingo722のブログ

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 「雪」 
 
 雪はしんしんと小屋の外に降り積もっていた。
「ごく平凡で、退屈な話なんですよ」
 彼はとても居心地悪そうに言った。
「ぜひ拝聴したいですね」
 僕は言った。僕は平凡な人の平凡な話を聞くのが大好きだった。また、それを退屈だと思ったことはほとんど一度もない。
「ごく普通の家庭で生まれました。父と母、弟が一人、犬を一匹飼っていました」
「おウチに庭は?」
「ありました」
 男は答えた。
「兄弟揃って私立の大学を出て、親には随分と迷惑をかけました。私は学業にあまり身が入らず、半年間大学を留年いたしました」
「なるほど」
「そして何とか父親のコネもあって今の会社に就職しました。…あの、本当に退屈じゃないですか?」
「いいえ、ちっとも」
 僕はにっこりと笑って答えた。
 夜中を過ぎて雪はなお降り続き、どんどん森や平原に降り積もる。そして小屋の屋根にも。彼の話やこれまで僕が聞いてきた様々な人々の様々な種類の平凡な話も、やはり僕の中に降り積もってゆく。まるで僕のささやかなエゴさえも覆い尽くすように。僕はそんな人々の平凡な話を聞くのが大好きである。