「アンケート」
「5分間だけ時間を頂けないかしら?」
僕は読んでいた小説から目を上げた。そこには(おそらく)見ず知らずの女性が立っていた。年齢はおそらく30代後半、顔立ちは整っており、度のきつそうな眼鏡を掛けている。化粧気はそれほどなく、サッパリとした服装をしていた。
「失礼?」
「5分だけ時間が欲しいの」
彼女はキッパリとした口調で言った。
「申し訳ないけれど、何かセールスの類だったら僕は今それほどお金も無いし…」
「結婚はしてらっしゃるのかしら?」
彼女は僕の言葉を遮るように言った。
「いいや…でも本当にセールスだったら…」
「彼女は?」
「一応」
「年下かしら?」
「まぁ」
「付き合ってどれぐらいになるのかしら」
「一年ぐらいかな」
「なるほどね」
彼女は一連のやり取りを手帳に書き留めるとサッと席を立った。
「ありがとう。彼女と上手く行くといいわね」
「あの、これは一体どういう…」
彼女は何も言わずに僕の伝票を取るとサッサと行ってしまった。僕は一人ポツンとテーブルに取り残されたまま、やり場の無い感情を抱えていた。小説を読もうにも、もうそこに意識を集中することは出来なかった。彼女の質問の意図はどこにあったのだろう?そもそもの目的は?結局質問の答えは見出せないまま、深夜のファミリーレストランで僕は一人呆然と佇んでいた。