「野球」
「ねぇ、あのピッチャーは何ていう人なの?」
「あのピッチャーは…佐々木だね」
僕は素早く電光掲示板に目を走らせてから言った。
「ふぅん。すごい人なの?」
「まぁ、プロだからね」
僕はドギマギしながら答えた。
「見て!あのバッター、男前じゃない?」
「うん、確かに」
「人気ありそうね」
「うん、確かに」
冷や汗を拭いながら僕は言った。そこでカキンッという快音が響いた。
「見て!すごい!打った、打った!どうなるの?」
「うん、まぁ、点が入るだろうね」
ランナーは2塁で止まり点は入らなかった。僕は彼女がその事に触れるかどうか気が気じゃなかったが、どうやら別のバッターに目が行っているようだった。
「ねぇ、どっちが勝つと思う?」
「まぁ、時の運だからね」
僕は曖昧に答えた。ふぅ。僕は野球の試合を観に球場に来たのはおろか、テレビの中継すらほとんど観たことは無い。まったく、男だからという理由でみんなが野球に詳しいという思い込みは止めて欲しいものだ。