「出会い」
挨拶を交わしたあと、ひとしきりの沈黙を経ておずおずと僕たちは自己紹介を始めた。名前に始まり、年齢、好きな事、家族構成、そういった事だ。そうやって改めて振り返ってみると、自分が見事に特徴を欠いた人間であることにうんざりさせられた。
「僕は犬を飼っている」
彼はそう言った。
「そう」
僕は応えたものの、何と言っていいか分からず、再び沈黙が訪れた。ちなみに僕は犬を飼ったことは無い。
「僕たち、割と似たもの同士だね」
何を思ったか彼はそう言った。似ていることと言えば、年齢と背格好ぐらいのものだと思うのだが。
「そうだね」
ややあって僕はそう答えた。
「僕たち、上手くやっていけそうだな」
彼は顔をほころばせて言った。いくぶん変わったところはあるが、悪い人間では無さそうだ。僕らは同じ時期に短期のアルバイトで出会ったもの同士の気楽さで、そこから時間を見つけては色々な話をした。
あれ以来10年近くになるが、僕らの親交は今なお続いている。彼に至っては結婚して子供まで生まれているわけだが。人生における出会いというのは分からないものである。