「惰性」
己の境遇を普遍化することにも飽きた頃、僕は旅に出ることにした。気ままな傷心旅行だ。
しかし朝起きて電車に乗ろうとしたとき、本当は自分がどこにも行きたくなんか無いことに気がついた。引き返すのも面倒なので数駅離れたところのカプセルホテルで1泊することにした。
夜中のロビーであてもなく雑誌のページをめくっているとき、流石に気が滅入って来て涙が溢れたが、それが失恋から来るものなのか己の状況の馬鹿らしさに嫌気がさしたせいなのか分からなかった。
それでも翌朝ホテルを出る頃には気分はいくらかマシになっていた。そして結局人は日常の惰性の中でしか生きられないものなんだなと思い、また嫌気が差し始めたが、それもすぐに慣れてしまった。