無駄 | shingo722のブログ

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 「無駄」
 
 「完全に不毛な作業なんて無い」
 男は言った。その目は完全に冷徹であり、機械的な印象を人に与えていた。
「完璧な無駄などと言うものが存在しないようにね。この世から無駄と呼ばれるものを全く排除してしまえば、この世の中それ自体のなりたちそのものを揺るがす事になりかねない」
 その冷ややかな印象とは真逆なことを口にするこの男の態度には、どこか掴みかねるものがあった。
「それでつまり…」
 僕はおそるおそる聞いてみることにした。
「僕に割り当てられる作業というのは?」
「ティッシュを配る人間を監視する人間を監視する仕事だよ」
「…?」
「ティッシュを配る人間は実によく仕事をサボるものだ。よってこれを監視する人間が必要になる」
「はぁ…」
「しかし監視人とて人間だ。これもまたサボることを覚える。果てはティッシュを配る人間とグルになってサボることもある」
「そうなんですか」
「よってこれを監視する人間が必要になるのも必然だ」
「ちなみにその監視人がサボるという可能性は…?」
「君のことかね?」
 男はニヤリと笑って僕を見た。
「我々は基本的に君の事は信頼している。しかし滅多な事は考えないことだ。我々も余計な仕事が増えることは望まないのでね」
 そう言うと男は部屋を出て行った。僕はひとり取り残された部屋で仕事のマニュアル(こんなものが必要なのかどうかすら怪しい仕事だが)を眺めながら、世の中には実に色んな種類の仕事があるものだな、と思った。