春 | shingo722のブログ

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 「春」
 
 何度目かの春が巡ってきたとき、僕は彼女と別れる決意をした。これ以上彼女と居ても、お互いにどこにも行けないだろうという気がしたのだ。
「いずれこうなることは分かっていたわ」
 僕が別れを告げたとき、ダイニングのデーブルに向かい合って座っていた彼女は静かにそう言った。そして僕はひとりになった。
 それからまた何度目かの春が巡ってきたとき、彼女から便りが届いた。結婚するということだった。相手はもちろんというべきか、僕の知らない男だった。幾度春が訪れようとも僕だけがどこににも歩き出せないまま、同じところに留まり続けていた。
 最早葉っぱばかりになってしまった窓の外の桜の木を見ながら、僕だけがあのときの春を繰り返し続けていた。