「打ち明け話」
「それでつまり…」
僕はそこで5秒ほど間を置いた。彼女と僕との間に空いたポッカリとした空間を示唆するような沈黙だった。
「君は吸血鬼なわけだ」
「正確に言えばヴァンパイアね。吸血鬼は我々純粋なヴァンパイアによって増やされる側の元人間も含む表現だから。まぁあくまで私たちの中での使い分けということだけども」
僕はボンヤリと彼女を見た。彼女の1つ1つの言葉は理解出来るのだが、彼女が総体として何を言おうとしているのかを把握しかねていた。
「でも私がヴァンパイアだからって気にしないでね。別に今ここであなたを取って食おうというわけじゃないんだから」
「でも…」
僕は言いかけて口をつぐんだ。なぜ、日の光の中で活動出来るのか、普段の生活はやはり我々人間とは違うのだろうか、そもそもなぜそんな重要な秘密を(仮にそれが真実とするならばの話だが)僕のような大学のクラスメイトで、たまたま喫茶店で居合わせたというだけの人間に打ち明けるのか、様々な疑問が浮かんだがそれを口に出した瞬間なんだか馬鹿げた問いになりそうだったのでやめた。
僕がそれ以上何も言わずにいると彼女はさっと伝票をつかんで立ち上がった。
「いいのよ、ちょっとした打ち上げ話に付き合ってもらったお礼よ」
「あのさ」
何かを言わなくてはならないような気がして僕は口を開いた。
「このことは他の誰かに話したの?例えば大学の友達とか」
「さあね」
彼女はにっこりと笑って言った。
「でも何となく、誰かに打ち明けたくなることがあるわ。それにあなたって口が固そうだから」
それだけ言うと彼女は喫茶店の扉を出て、さっさと次の講義へと行ってしまった。僕はまたそんな彼女をボンヤリと見送りながら、普段から真面目そうだと言われる自分自身を、初めて褒めてやりたいと思った。