ネオン街 | shingo722のブログ

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 「ネオン街」
 
 けばけばしいネオン街を歩いているとチカチカと目が痛んだ。金と性欲が蠢く中を黙々と歩いているだけで平衡感覚が失われそうだった。自分とは関係のない世界の出来事だと分かっていても、そこを歩いている以上、自分もその景色を構成している一部なんだという意識から抜け出せなかった。
 少しネオン街の中心から離れたうらぶれたホテルの前で少女がしゃがみ込んでいるのが目に入った。少女は私に目をとめると立ち上がり、無言でホテルの方へと目配せした。どう見ても未成年だったので無視して行こうとすると、「安くするからお願い」と腕にすがりついて来た。そのまま振り解いて行ってしまっても良かったのだが、ふと少女の首筋にある痣に目がとまった。
 部屋に入るなり服を脱ごうとする少女を押しとどめて、「話をするだけで構わないかな?」と聞いた。訝しそうに私を見る彼女に私はさらに、「その痣はどうしたの?」と首筋を指して聞いた。
「別に、なんでもいいでしょ」
「殴られたの?」
「やらないなら出てって」
「親?」
「うるさい」
 部屋を出て行こうとする少女の手に無理矢理ポケットから出したクシャクシャの札を握らせた。今日の日雇いの金のほとんどだった。
「いらない」
「兄弟は?」
「え?」
「いるの?」
「…弟」
「なんか食わせてやりなよ」
 私はそれだけ言い残して部屋を出た。外は冷ややかな風が吹いていた。せめて彼女とその弟が温かい料理にありつくことだけを願って、私は家路を急いだ。