祖母 | shingo722のブログ

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 「祖母」
 
 懐かしさと僅かな嫌悪感の入り混じった奇妙な感情の落とし所を見つけられないまま、僕は久しぶりに訪れた祖母の部屋を見回していた。生け花の先生だった祖母は、昔から生徒からの贈り物を部屋に飾っていた。それに混じって、もう何十年も使っていないであろうラジオや何年も前で日付の止まっているカレンダーが置いてあった。そんなとりとめのない部屋の中を眺めながら、俗物でありながら自分のことを善人だと信じて疑わなかった祖母の言葉を思い出していた。
「私は本当に周りから好かれているのよ」
 彼女はよくそう言っては自分が人にしてあげたこと、その見返りにどれだけ自分が人から好かれているのかということ、どんなものを贈られたかということを僕に話して聞かせては、小学生の僕を鼻白んだ気持ちにさせていた。本当に人から好かれている人がなぜそんなに自分からそのことを強調しなくてはならないのか?幼いながらに疑問だった。
 しかし、いざ亡くなってみるとやはり良い思い出や可愛がってもらった記憶ばかりが優先的に僕の心を占め、晩年の自分が弱り切っていながらも僕のことを気づかう姿ばかりが思い出された。なんだか祖母の死によって僕の記憶が整理されていくようだった。
 沢山の思い出に囲まれながら祖母だけが居ないその部屋で、九十年を越える彼女の人生の前に、幼い頃の僕が抱いていた感情などあまりにもちっぽけだった。