「平凡さについて」
彼女が僕の何を気に入ってくれたのかは分からない。彼女は人目を引かずにはおけない程の美人だったし、一緒に歩いていれば必ず何人かの男は振り返って恍惚とした顔で彼女に見惚れた。
かと言って僕がその事に関して彼らに対して優越感を感じていたかというと断じてそれは違う。僕のような平凡な男の何に惹かれて彼女が一緒にいてくれるのか解らない以上、僕は常に不安を感じないわけにはいかなかった。彼女がいつ自分から離れて行ってしまうのかについて、また他の男のどうしてお前のような男が彼女の隣にいるのだという敵意に満ちた視線に対して。
そこである日、僕は思い切って彼女に聞いてみた。
「ねぇ、僕といて楽しい?」
「え?」
彼女はきょとんとした顔で僕を見た。
「つまり、僕みたいな平凡な男といて、退屈じゃないのかなってこと」
「あなたってすごく変わっているわよ」
彼女はクスクス笑いながら言った。
「あなたみたいなタイプの人って初めてだわ」
今度は僕がきょとんとする番だった。一体僕の中の何が彼女の興味を捉えたのかは分からない。でも、それが解るまでの間、もし謎が解けると共に消えてしまう魔法のような時間の間であったとしても、僕は彼女と一緒にいられることの幸福を感じないわけにはいかなかった。たとえそのことで世の男の多くの敵意を受けることになったとしてでさえも。