香水 | shingo722のブログ

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 「香水」
 
 朝目が覚めてベッドを出てからキッチンまで降りて行ったところで、ようやく妻がもう出て行ってしまったことを思い出した。やれやれ、彼女が出て行ってからもう1ヶ月になるというのにな。僕は仕方なく自分でコーヒーを淹れてトースターをセットし、目玉焼きを焼いた。朝刊を開いてコーヒーを飲みながらそれを読もうとしたとき、ふと僕は妻の気配を感じた。いや、それは正確に言うなら匂いだった。彼女がよくつけていた香水の香り。僕は反射的にキッチンに立つ妻の姿を想像してしまい、その幻想が一瞬のうちに霧散してしまったあと、前よりもずっと哀しい気持ちになっていた。キッチンにも、妻が前に自分のものとして使っていた部屋にも、リビングにも、玄関までその香水の香りは染み付いていた。僕は胸が張り裂けてしまわないよう頭を抱えて、じっと耐えた。しかし、その香りは(あるいは香りの幻想は)弱まるどころかますます強く、僕の鼻腔と脳を貫いた。妻の香りに包まれて、僕はあまりにも孤独だった。