表情 | shingo722のブログ

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 「表情」
 
 「子供は欲しかった?」
 彼女は聞いた。夕陽が窓から部屋に差し込み彼女の顔の左半分を眩しく照らし、右半分に濃い影を落としていた。その表情からはどのような感情も読み取れなかったが、その明るい左半分の表情が建前、暗い右半分が本心を表しているような気がふとした。
「いや、子供はどちらでも良かったよ」
 僕はそう言い終わってから、「いや、欲しくなんかなかった」、そう言い直した。
「別に気をつかう必要なんかないのよ。今となってはどうだっていいことなんだから」
 そう言って彼女は左半分の顔で自嘲気味に笑った。
「子供なんか関係ない。ただ僕が…」
「本当に気にしないで。もう行かなくちゃ」
 彼女は僕の言葉を遮って言った。相変わらずその影に隠された表情の奥までは読み取ることが出来なかった。
 夕闇が辺りを飲み込み、暗くなったキッチンで僕は独り佇んでいた。窓から差し込む月光が照らす僕の顔が笑っているのか、泣いているのか、自分では判別がつかなかった。