「ハイウェイ」
どこまでも続く渋滞に我々は苛立っていた。FMラジオから流れる曲にも、それを紹介するディスク・ジョッキーの声にも無性に腹が立った。どうしてそんな奇妙なイントネーションで喋らなくてはならないのだ?
「ねぇ、いつになったらこの渋滞は終わるのかしら」
「わからないよ。僕に聞かないでくれ」
「でもあなた、もうすぐ着くからって言ってたでしょ?」
「渋滞に引っ掛かるとは思わなかったんだ。いつもこの時間は空いているからさ」
「お腹がすいたわ」
僕はため息をついて前方を睨んだ。しかし前を向いたところで切れ目の無い車の列が見えるだけだった。
「渋滞を抜けたらドライブスルーに寄ってハンバーガーを食べよう」
僕は努めて明るい声で言った。
「それぐらいの寄り道ならいいだろう。きっと夕方までには目的地に着くさ」
彼女は何も言わずに旅行ガイドに目を落とした。
ようやく渋滞を抜けて車が徐々にスピードを上げ始めたとき、路上に奇妙なものが落ちているのが目に入った。
「イタチよ」
「イタチ?」
「可哀想に。轢かれたのね」
言われてみれば確かにそれはイタチだった。その奇妙な胴長の生き物の亡き骸は高速道路の上で汚らしく、より生々しく見えた。
下道に降りてドライブスルーでハンバーガーを買って食べている間も、僕はずっとさっき路上で見たイタチのことを考えていた。彼(彼女)は自分が生まれてからいつか車に轢かれて高速道路の真ん中で死ぬことになるなんて思いも寄らなかっただろう。それは突然の道路渋滞のように不吉な影として突如人生に現れたのだ。僕はハンバーガーを食べながら、不幸なイタチの運命に想いを馳せていた。